ここからは、光源氏亡き後の物語である。
男の嫉妬は見苦しい。
光源氏の息子であるにも関わらず、真面目で不器用で、色恋に疎い夕霧の君。
匂い立つ光の君の美しさは変わらない。しかし、確実に月日を重ね、年を重ねてきた。
涙、涙、涙。人は恋をすると、これほどまでも涙を流すものなのだろうか。それとも、恋の相手が光源氏だから、これほどまで女人たちが涙に袖を濡らすのだろうか…。
はじめは朧げに。次第に鮮やかに蘇ってくる…。殿上人の華やかで、切ない恋が幕を開ける。