良薬は口に苦し 良書は心に甘し

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泳ぐのに、安全でも適切でもありません 江國香織

泳ぐのに、安全でも適切でもありません (集英社文庫)
江國 香織
集英社
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日本語で書かれた小説なのに、洋書のような匂いがしたり、
まるで一枚の絵画を見ているような感覚にさせられるから不思議だ。
どこかヨーロッパの美術館で絵の鑑賞をしているような
気になってしまう。

登場する人物は、ほとんどが日本人であるのに、醸し出す匂いは
和ではなく洋なのだ。
それは、出てくる食べ物や風景がそう感じさせるのかもしれない。

たとえば、ある場面では海が見えるレストランで家族がワインを飲んでいたり、
またある場面では砂浜でサマーブランケットにくるまって過ごしたりしている。
ワインを飲むことは珍しいことではないが、それが当たり前の光景で、
極自然な行為として登場してくるから、なおのことそう思ってしまうのだ。

表題作「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」を含む、十話から成る
短編小説は、十人の人生の断片を切り取った物語である。

祖母の危篤の知らせを聞いて集まった家族、ある恋人たちの食事の風景、
BARで働く女の日常といった、一見するとどこにでもありそうな情景を
描いている。

しかし、実情は違う。

危篤の祖母の見舞いの帰りにレストランで乾杯をする家族であり、
恋人と毎日大量の食事を食べ尽くす女であり、BARで働きながら、
客の男との情事を夢想する女なのである。

えてして、こういうことは起こる。

当人たちは何の気なしに行っていることでも、他者から見ると異様な光景に
映ってしまうのだ。
ただそういうものを見せられても、エグさ、気持ち悪さのようなものを
感じないのは、江國香織の表現の巧みさなのだろう。

短編小説とは思えないボリューム感。

読み終わった後は、もうお腹いっぱいで何も食べられないという
満足感でいっぱいになる。

過不足がない。
すべてが、丁度良い。
だから、こんなにも満たされる短編小説になるのだと思う。






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